体質別・おすすめの陰陽調整レシピ

人の体には、個々に異なる体質と気質があり、そのバランスが日々の食事によって大きく左右されます。東洋の養生では、すべての食材に陰性と陽性の性質があるとされ、それらをどう組み合わせ、どのように調理するかによって、体内の氣のめぐりが整うと考えられています。
この記事では、体質別に現れやすい陰陽の傾向を見極め、それぞれの状態に合ったおすすめの食材や調理法、日々の養生につながるレシピの考え方をご紹介します。自然のリズムと自分の状態に耳を澄ませながら、無理なく整う食のあり方を探っていきましょう。
冷えやすく虚弱な体質の人におすすめの陽性を補う温めレシピの例

体が冷えやすく、手足がいつも冷たい。疲れやすく、胃腸が弱くて食後に膨張感がある。そんな体質は、陰性に傾いているサインかもしれません。陰性体質の人には、陽性の力を適度に取り入れることで、体の内側から温まり、氣の流れが安定していきます。
おすすめの食材は、ごぼう、にんじん、レンコン、かぼちゃ、自然塩、味噌、梅干しなど。これらは土中で育つ根菜であり、氣を下げて温める力に優れています。動物性食品を摂る場合は、魚や鶏肉など中庸に近いものを少量用いるのが適しています。
調理法としては、煮物や蒸し料理が理想です。火を通すことで食材の陽性が高まり、体の芯まで温まります。たとえば、にんじんとごぼうの味噌煮、かぼちゃの生姜煮、切り干し大根と昆布の煮含めなどは、日常的に取り入れやすく、ゆるやかに体を整えてくれる養生レシピです。
のぼせやすくイライラしやすい人におすすめの陰性を補う冷ますレシピの例

頭が熱くなりやすく、顔が赤くなる。怒りっぽかったり、興奮しやすい。体は熱いのに手足が冷えるといったアンバランスを感じる。こうした陽性に偏った体質には、陰性の食材を取り入れて、過剰な熱を鎮める必要があります。
おすすめの食材は、きゅうり、トマト、レタス、豆腐、緑茶、昆布などの海藻類。水分が多く、体を冷やす性質を持つ食材が中心となります。ただし、極端な冷やしすぎは胃腸に負担がかかるため、調理法は生食に偏らず、さっと湯通ししたり、おひたしや和え物にするとバランスが取れます。
たとえば、湯むきしたトマトと豆腐の塩昆布和え、きゅうりの甘酢和え、わかめとレタスの炒めものなど、軽やかなレシピで氣の熱を静めながら、心身を鎮めていくことができます。
緊張が強く神経が高ぶりやすい人へには陰陽中庸の穏やかレシピを

気持ちが張り詰めやすく、眠りが浅い。体は元気だがどこか疲れている感じがする。神経の高ぶりや過敏さがある人は、陰にも陽にも偏らず、中庸のバランスを意識した食事が有効です。
中庸の食材としては、玄米、もち麦、にんじん、玉ねぎ、大根、椎茸、味噌、醤油など、穀物と発酵調味料を中心にした構成が基本となります。過度に強い刺激を避け、やさしく穏やかな味わいに仕上げるのがポイントです。
例えば、玄米の雑穀ご飯と味噌汁、大根と人参の煮物、干し椎茸と玉ねぎの煮びたし、あっさりした煮込みうどんなどが向いています。身体の中心を温かく保ち、心をほぐしながら神経のバランスを調えることが期待できます。
消化力が落ちて疲れやすい人には胃腸を助ける温養レシピを

何を食べても重く感じ、胃もたれしやすい。疲れが取れず、食後に眠気が来る。こうした人には、食材の性質以上に、消化の負担を軽くし、氣を養う食事が大切になります。
温める性質の中でも、消化によく、やさしくエネルギーを補えるのは、かぼちゃ、里芋、人参、米、味噌などの柔らかい食材です。調理法は、柔らかく煮る、すりおろして温める、重湯やお粥にするなど、胃腸の負担にならない形が理想です。
かぼちゃの葛煮、生姜入りのお粥、すりおろし大根と人参のスープ、味噌仕立てのすり流しなどは、弱ったときの回復に効果的で、内臓から氣の流れを立て直してくれます。
陰陽を知れば、自分の体はもっと楽になる
自分の体質や気分の変化を見つめ、それに合わせて食材や調理法を整えることは、自然と調和する食の第一歩です。陰陽のどちらが優れているわけでもなく、大切なのはその時の自分にとって、どちらの性質が必要なのかを感じ取ることです。
体質に応じた食材を選び、無理なく整えること。それは、食べるという行為を通じて、自分をいたわる静かな習慣を育てることにもつながります。食事は単なる栄養補給ではなく、心身を整える日々の儀式です。陰陽の智慧を生かしながら、自分に合った食のバランスを楽しんでいきましょう。